2016年5月4日水曜日

石原慎太郎さんの『天才』、今の繁栄は田中角栄さんのお陰!?

今話題となっている『天才』(石原慎太郎、幻冬舎)を読んでみました。
これは石原慎太郎さんが田中角栄さんを一人称で書いている物語です。
やはり、田中角栄さんはスゴい人物だったのですね。
日本のためにやり過ぎた結果、アメリカの闇の勢力に葬り去られたのでしょうか。
例により付箋の付いた個所から拾ってみたいと思います。(一部にけいじの編集あり)
◆何事にも事前のしかけというか根回しのようなものが必要(p7)
◆金の貸し借りというものが人間の運命を変える、だけではなしに、人間の値打ちまできめかねない(p8)
◆人間を左右する金という化け物/上京するときの母親の言葉「大酒は飲むな。馬は持つな。出来もしないことはいうな」(p10)
◆金も含めて、この世をすべてしきっているのは、大なり小なりお上、役人たちがつくっている縦の仕組みなのだ。ならばそれを自在に使う立場の人間とは一体誰なのだ(p13)
◆人の世の中での賄賂なるものの効用の原理を悟らされた(p21)
◆これから俺はどうする、何をどこまでやる、その気になればやれる、必ず出来る、してみせる、しなければこの俺ではないという思いで胸が果てしなくふくらみ、自分で自分を抑えられぬほどの将来への野心というか気負いがこみあげてきて、乱暴なほど赤ん坊に頬ずりしてやったものだった(p26-27)
◆親しい相手をこの世から失うというのはいつも辛いものだ。一体誰が何が人間の運命を決めて、その生と死を司るものかとつくづく思う(p28)
◆所詮この世は互いの利益の軋轢で、それを解決するのは結局互いの利益の確保、金次第ということだった(p41)
◆政治家には先の見通し、先見性こそが何よりも大切なので、未開の土地、あるいは傾きかけている業界、企業に目をつけ、その将来の可能性を見越して政治の力でそれを梃入れし、それを育て再生もさせるという仕事こそ政治の本分なのだ(p47)
◆政治家は物事の先をいち早く読まなければならない。周りがまだ気づかぬことの可能性をいち早く予知して先に手を打ってこそ(p48)
◆役人という種族に国民の期待を読み取る先読みの能力がそれほどあるとはとても思えはしないが(p62)
◆もともと無能で腰抜けの外務省という役所の限界の露呈としかいいようがない(p70)
◆美術の愛好家で大パトロンの福島とかいう皮肉屋の大金持ちが、人付き合いは悪いが、町中で葬式に出会ったり使者を運ぶ霊柩車に出会ったりした時は必ず立ち止まり帽子をとって一礼するので、誰かが訳を質したら、「たとえ見知らぬ者でも、その人間の一生の意味や価値は傍らには計り知れぬものがあるに違いない」といったそうな(p75-76)
◆何かのメディアが載せていたおふくろならではの言葉が一番身にしみたものだ。「アニに注文なんてござんせんよ。人さまに迷惑かけちゃならねぇ。この気持ちだけだな。これでありゃ、世の中のしくじりはござんせん。他人の思惑は関係ねえです。働いて働いて、精一杯やって、それで駄目なら帰ってくればええ。おらは待っとるだ。人さまは人さま。迷惑にならねえことを精一杯はたらくことだ。総理大臣がなんぼ偉かろうが、そなんなこと関係しません。人の恩も忘れちゃならねえ。はい、苦あれば楽あり、楽あれば苦あり、枯れ木に咲いた花はいつまでもねえぞ。みんな定めでございますよ。政治家なんて喜んでくれる人が七分なら、嫌ってくれる人も三分はある。それを我慢しなきゃ、人間棺桶に入るまで、いい気になっちゃいけねえだ。でけえことも程々にだ。」と(p83-84)
◆石油は経済にとっての血液のようなものだ。(p120)
◆石油に関しては日本はそのほとんどを外資系のメジャーに依存していて、その背後には厳然としてアメリカがいるのだ/イランの石油をメジャーが封印してしまい、イランが難儀している時に、出光興産が日章丸というマンモスタンカーを派遣して彼等の民族石油を買い付けてやったという快挙があった(p121)
◆石油危機は俺に政治家としての新しい命題を与えてくれた/エネルギーに関する問題でも日本は自立しなくてはならぬ/アメリカやメジャーに頼らぬ日本独自の導入ルートを開拓すべきなのだ/役人たちにまかせれば、結局、彼らはアメリカに気兼ねして事が進む訳はない/俺は資源外交としてアメリカ以外の供給源たり得る国を歴訪しての買い付けを俺自信の手でやる決心をして契約を進めてきた/後で思えばあれがどんな形で我が身に跳ねかえってくるかには気づかなかったが(p122-123)
◆国家の将来のために事あれと思って出かけた資源外交からもどってくれば、定例の記者会見で出てくる質問は反主流派の記者からばかりで、政治部の中でもパワーバランスが変わってしまったのを痛感させられたものだ(p127)
◆つまり俺は彼等に嫌われたのだ/アメリカという虎の尾を踏みつけた俺を除くために、事を巧みに広く手を回してロッキード・スキャンダルという劇を展開させたのだろう(p148)
◆"ああ、権力というものは所詮水みたいなものなのだ。いくらこの掌で沢山、確かに掬ったと思っても詮のない話で、指と指の間から呆気なく零れて消えていくものなのだな"(p179)
◆賢者は聞き、愚者は語る(p180)
◆一日一生という言葉があるが、今までの毎日はまさにそれだった(p182)
◆アメリカ映画『心の旅路』(p185)
◆アメリカの恋愛映画『裏街』(p197)
◆アメリカのメジャーに依存しまいと独自の資源外交を思い立ったのも彼だった/彼はアメリカという支配者の虎の尾を踏み付けて彼等の怒りを買い、虚構に満ちた裁判で失脚に追い込まれた/アメリカとの種々交渉の中で示した姿勢が明かすものは、彼が紛れもない愛国者だったということだ(長い後書きp204)
◆端的にいって政治家個人としての独自の発想でまだ若い時代に四十近い議員立法を為し遂げ、それが未だに法律として適用しているという実績を持つ政治家は他に誰もいはしまい(長い後書きp204-205)
◆アメリカのメジャーに依らぬ資源外交もその典型だと思う/それ故にアメリカの逆鱗に触れ、アメリカは策を講じたロッキード事件によって彼を葬ったのだった(長い後書きp207)
◆アメリカの刑法では許される免責証言なるものがこの日本でも適用され、それへの反対尋問が許されずに終わった裁判の実態に彼等のすべてが驚き、この国の司法の在り方に疑義を示していたのを覚えている/当時の私もまた彼に対するアメリカの策略に洗脳された一人だったことを痛感している(長い後書きp207-208)
◆いずれにせよ、私たちは田中角栄という未曾有の天才をアメリカという私たちの年来の支配者の策略で失ってしまったのだった/歴史への回顧に、もしもという言葉は禁句だとしても、無慈悲に奪われてしまった田中角栄という天才の人生は、この国にとって実は掛け替えのないものだったということを改めて知ることは、決して意味のないことではありはしまい(長い後書きp216-217)
石原慎太郎さんが天才と評するくらいですから不世出の傑物だったのでしょうね。
金権主義というメディアの影響でよいイメージは持っていませんでしたが、テレビで見た直感では人間として好感が持てましたですね。
やはり直感が当たっていたのだと思うと、スーッと霧が晴れたようで、この本を読めてよかったですわ。
有り難いことです。
ありがとうございます。

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