2015年10月7日水曜日

桐島洋子さんの『ほんとうに70代は面白い』、痛快な内容と粋な文章にスカッとする

読み終えた桐島洋子さんの本『ほんとうに70代は面白い』には気の利いた表現が随所に現われてきます。
文章の切れ味もすばらしいと思いますが、内容にも意気投合です。
◆本当にこのごろ、幾つになっても元気で綺麗なひとが増える一方だ。もちろん年をとるほどに容姿や体力は当然自然に少しずつ衰えていくけれど、代わりに成熟と洗練を重ね、余計な欲が抜け落ちた精神は透明度と深みを増していき、長年にわたって蓄積された知識や教養が珠玉のように内面から輝きはじめるから、トータルとしては年と共により魅力的になる人が多いのである。
だから、今流行の「アンチエイジング」という言葉も気に入らない。アンチというのはアンチ温暖化とか、アンチ軍国主義とか、何かに反対し、それをストップしようという思いを込めて使う言葉ではないか。
つまりエイジングを悪いことと決め付けているわけだけど、エイジングとは熟成という意味ですよ。私が愛する骨董をはじめ、ワインもチーズも味噌もヴァイオリンも家具も、エイジングによって味わいを深め価値を増していくのに、アンチエイジングとは何事ですか。(p50-51)
◆まあ、若いうちは大いに意欲的、野心的であって当然だが、熟年に至ればだんだん先が見えてきて、富や名声や権力に対する欲望と競争心がしぼんでいく。そういうエイジングを物哀しく感じる人が多いようだが、私はむしろ神の祝福だと思っている。
たしかにエイジングはいろいろなものを手放していく引き算の過程だが、それでどんどん肩の荷が下りて身軽になり自由になっていくのだ。そして老子の「足るを知る者は富む」の境地に達するのが最も望ましい老い方だろう。
幸い私もかなりそれに近い状態で、普通の生活に散りばめられた当たり前のこと、例えば朝一番のコーヒーの香りから夜更けにもぐり込むふとんの暖かさに至るまでがいちいち仕合わせで、これだけでも生きている甲斐があるなあと思ってしまう。(p55)
◆そもそも人間には食物を見て嗅いで舐めてその良否を判断し、もし間違っても吐き出したり下痢したりして異物を排除するシステムが備わっている筈なのだ。
文明には余計なお世話が多過ぎて、そのシステムも衰弱の一途だが、私は幸い野蛮なままだから、今どきの「賞味期限」などというものに呪縛されることもなく、自分の五感を信頼して食物の安全を確かめる。なんの不都合もない食物を賞味期限切れというだけでさっさと廃棄する罰当たりたちは、タイムマシーンに乗せて飢餓の時代に放り込んでやりたい。(p111)
人目のシャワーが人や家を磨き美しくするのだから、億劫がらずにもっと人を招いてパーティーをしようというのが私の持論だが、これは土地についても言えることだと思う。
ただし、自然や文化の懐が浅い場所では、たちまち観光化に踏み荒らされて堕落してしまう恐れがある。パリがあれほど世界中から旅人が押しかけてもびくともせずに本来のパリであり続けるのは盤石の文化の蓄積あってこそだろう。
観光化に飲み込まれないのはカナダも同じで、自然の懐の深さが半端ではなく、その恵みは汲めども尽きないから、もっともっと人に来てほしいし、この豊かな自然環境に育まれた健康な生活文化や、さまざまな民族のアイデンティティーがモザイク状に共存するしなやかな国際性も、カナダの大きな魅力として、ぜひ体験していただきたい。(p115)
読んでいてスカッとしますね。
バンクーバーには、本物の贅沢があるというお話を読んでいると本当に行きたくなってきちゃいますね。
読んでいるだけで何かワクワクして楽しくなってくるではありませんか。
有り難いことですわ。
ありがとうございます。

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